20年前の未解決事件。
小さな町に再び現れた、似た手口の殺人。
怪しい人間は、ひとりではありません。
誰かを疑えば、その人にも秘密がある。
真実に近づいたと思えば、見えていた景色がまたひっくり返る。
韓国ドラマ『怪物』は、そんな疑いの連鎖を最後まで途切れさせない心理サスペンスです。
正直、ながら見していたことを途中で後悔しました。
もっとちゃんと観ればよかった。
そう思ってからは、寝落ちして見逃したところを戻り、分からなくなればまた戻り。
それでも見落としているものがありそうなくらい、台詞も表情も人間関係も細かく張り巡らされています。
そして、二転三転する事件の真相を追っていたはずなのに。
最後に残ったのは、犯人への驚きではありませんでした。
あの日からずっと止まっていたイ・ドンシクの時間と、
その顔にようやく戻った、明るく優しい表情。
こんなに苦しい物語が、こんなに温かく終わるとは思わなかった。
その温度まで含めて、『怪物』でした。
どんな人におすすめ?
- どんな人に向いてる?
-
伏線が張り巡らされたサスペンスや、「誰を信じればいいのか」が最後まで揺らぐ作品が好きな人には、かなり相性のいいドラマです。
事件そのものだけではなく、人間の嘘、罪悪感、執着、家族、町という閉ざされた共同体までじっくり描かれるため、単純な犯人探しでは終わりません。
そして何より、シン・ハギュンとヨ・ジング。
言葉ではなく視線で探り合い、疑い、少しずつ関係が変化していく二人を追うだけでも見応えがあります。
派手な事件が連続するタイプのサスペンスとは少し違いますが、人物の内側まで深く入り込む韓国サスペンスが好きなら、じわじわ抜けられなくなる作品です。
- 逆に、向いていない人は?
-
気軽にながら見できるサスペンスを探していると、少し疲れるかもしれません。
登場人物が多く、過去と現在の事件、人間関係、それぞれが抱えている秘密が複雑に絡みます。
少し見逃すと「あれ、これは誰の話だった?」となることも。
実際、ながら見して後悔しました。
できればスマホを置いて。
このドラマは、ちゃんと向き合って観たほうが面白いです。
こんな日に観てほしい
軽い謎解きでは物足りなくて、最後まで疑って、振り回されて、その先で人間に泣かされたい夜に。
頭も感情も使うドラマが観たい日に選んでほしい作品です。
作品情報
・配信日:2021年2月19日
・エピソード:全16話
・ジャンル:サスペンス/犯罪クライム/心理スリラー
・演出:シム・ナヨン
・脚本:キム・スジン
・出演:シン・ハギュン、ヨ・ジング、チェ・デフン、チェ・ソンウン、チョン・ホジン、ほか
本作は第57回百想芸術大賞で作品賞、脚本賞、シン・ハギュンの男性最優秀演技賞を受賞しています。
あらすじ
20年前、ムンジュ市マニャンで女子大生イ・ユヨンが失踪します。
残されたのは、切断された指。
双子の兄イ・ドンシクは妹を失っただけでなく、その事件の容疑者として疑われることになりました。
それから20年。
警察官となったドンシクは、マニャン派出所で巡査部長として勤務しています。
そこへソウルから赴任してきたのが、エリート警部補ハン・ジュウォン。
正反対の二人はパートナーを組むことになりますが、ジュウォンはドンシクに疑いの目を向け、
ドンシクもまた簡単には本心を見せません。
そんななか、20年前の事件を思わせる新たな事件が発生。
閉ざされた小さな町で、過去と現在がつながり始めます。
誰が嘘をついているのか。
誰が何を隠しているのか。
そして、本当の「怪物」は誰なのか。
互いさえ疑いながら、ドンシクとジュウォンは事件の奥へと踏み込んでいきます。
『怪物』は、どこで観られる?
\ PrimeVideoで観る /
\ Huluで観る /
\ Leminoで観る /
\宅配レンタルサブスク /
感想|真相を追っていたはずなのに、最後は人間に泣かされた
ながら見したことを後悔するほど、全部がつながっていく

これは、面白かった。
ただ最初から最後まで完璧に集中して観ていたかというと、そうではありません。
途中まで、ながら見してしまった。
そして後悔しました。
これは、ちゃんと観るべきドラマだった。
人物の会話や視線、過去の出来事、何気なく置かれた情報が少しずつ積み重なり、
あとになって意味を持ってくる。
「ここ、見落としてるかもしれない」
そう思う場面が何度もありました。
寝落ちしてしまって戻る。
分からなくなって、また戻る。
それでも、まだ拾えていないものがありそう。
けれど不思議なのは、そんな状態でも面白さが落ちなかったことです。
むしろ後半に入るほど、画面から目を離せなくなりました。
二転三転。そのたびに「怪物」が変わっていく

『怪物』の面白さは、単純に「犯人は誰なのか」だけではありません。
誰かが怪しくなる。
その人を疑い始める。
ところが、その奥から別の事実が出てくる。
ようやく真相に近づいたと思ったところで、また景色が変わる。
二転三転どころではありません。
疑う相手が変わるたび、物語そのものの見え方まで変わっていく。
ドンシク自身も、最初から簡単には信用させてくれません。
何を考えているのか分からない。
笑っているのに怖い。
シン・ハギュンの表情が、とにかくすごい。
笑顔ひとつでも、その裏に悲しみがあるのか、怒りがあるのか、何かを隠しているのか。
見ている側までジュウォンと一緒になって、ドンシクを疑ってしまいます。
一方のジュウォンも、ただの冷静なエリート警察官では終わらない。
二人が疑い合いながら、それでも同じ真実へ向かっていく。
最初は噛み合わなかった二人の距離が変わっていくほど、
事件とは別のところでも感情が動かされていきました。
「怪物」は、ひとりの殺人犯だけを指しているのか

タイトルは『怪物』。
観始めたときは当然、猟奇的な事件を起こした犯人を指す言葉だと思っていました。
でも、話が進むほど簡単ではなくなります。
自分を守るために嘘をつく人。
大切な誰かを守ろうとして、別の誰かを傷つける人。
権力や立場を守るため、真実を押し込める人。
そして真実を知るためなら、自分自身まで壊してしまいそうな人。
怪物と人間の境界線が、だんだん曖昧になっていきます。
絶対的な悪をひとり見つけて終わる物語なら、ここまで苦しくはなかったのかもしれません。
20年前の事件から伸びたものが、あまりにも多くの人の人生に絡みついている。
だから真実がひとつ明らかになっても、簡単には救われません。
ジョンジェで、耐えられなくなる

ラスト30分は泣く。
そう聞いていたので、ティッシュまで用意して観ました。
準備万端。
それなのに。
ジョンジェで堕ちました。
そこから先は、事件の結末を見届けるというより、
ずっと抱えてきたものが一人ずつ剥がれていく時間のようでした。
特にラスト10分。
胸が苦しい。
うまく言葉にならないくらい苦しくて。
それくらい感情が詰まる。
ここまで複雑な事件を追い続けてきたのに、
最後の最後で効いてくるのはトリックではなく、人の顔でした。
あの日から止まっていたドンシクの顔

そして、一番残ったのがドンシクです。
20年前、妹が消えたあの日。
そこからドンシクが背負ってきたものを思うと、終盤の表情の変化がたまらない。
ずっとどこか張りつめていた顔。
笑っていても、本当に笑っているようには見えなかった顔。
それが最後には、
こんなにも明るく、優しい顔になる。
同じ人なのに、まるで違って見えました。
事件が解決したからすべて元通りになるわけではありません。
失った時間も、人も、戻ってこない。
それでも、ようやく前を向ける人がいる。
そのことが、あれほど重かった16話を少しだけ温めてくれました。
食事を共にする。その温かさで終わるのがいい

韓国ドラマを観ていると、食事を共にする場面の大切さを何度も感じます。
『怪物』もそうでした。
一緒に座る。
同じものを食べる。
そこに誰かがいる。
事件の真相を追い続け、疑い、傷つき、いくつもの関係が壊れてきた物語だからこそ、
最後にある日常の温度が沁みます。
大げさな幸福ではなくていい。
食卓を囲めること。
誰かと同じ時間を過ごせること。
それだけのことが、こんなにも温かい。
暗く重いサスペンスだった『怪物』が最後に見せたのは、怪物の顔ではありませんでした。
ようやく人間らしい時間を取り戻した人たちの顔。
この終わり方で、本当によかったと思います。
観終わったあとに残ったもの
犯人が誰だったのか。
どんな秘密が隠されていたのか。
あれだけ夢中になって追いかけたのに、観終わったあとに残ったのはそこではありませんでした。
残ったのは、ドンシクの顔。
20年前から背負ってきたものが、ほんの少し軽くなったような顔でした。
失ったものは戻らない。
起きたことも消えない。
それでも人は、誰かと食事をして、また生きていく。
あんなにも暗い場所を通ってきたからこそ、最後の温かさが忘れられない。
『怪物』というタイトルからは想像できないほど、優しい余韻でした。
『怪物』が刺さったなら、次はこれ
『秘密の森〜深い闇の向こうに〜』
誰も簡単には信用できない緊張感を、もう一度。事件の裏側にある組織と人間の思惑までじっくり追いたいなら、この流れがいちばん自然です。

『シグナル』
未解決事件が長い時間を越えて人の人生を縛り続ける、その重さに惹かれたなら。サスペンスとしての勢いが強く、真相へ近づくほど感情まで揺さぶられます。

『ボイス〜112の奇跡〜』
もっと速度を上げて、息を詰めるような犯罪サスペンスへ行くなら。『怪物』とは違うタイプの緊張感で、次の1話を止めにくい作品です。

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